連載回顧録10 師匠との釣り

2014年03月25日 11:09

いよいよ待ちに待った師匠、内田さんとの初釣行です。自宅から車を飛ばして師匠のご自宅まで向かいます。今日はオイラのホームグラウンドである三重県南勢町の磯へと向かう予定になってます。今日の目標は釣果なんぞではなくて、オイラの目に溜まりきったウロコをどれだけ洗い落とせるかです!名付けて、目からウロコ記念日!(笑)

はやる気持ちのせいかご自宅には予定の30分ほども前に着いてしまいました。

ピンポ~ン!「夜分すみません、深瀬と申しますが、、、、」 あれ?反応がないぞ? ピンポ~ン! あれ?って戸惑っていると突然に玄関がガラガラって開いてドキっ!

「おお!深瀬くんかぁ!いやぁはじめまして、御苦労さん!内田です。よく来てくれたねぇ、さ!入ってはいって!」

「ありがとうございます!今日は宜しくお願いいたします!」

年齢を全く感じさせない位にとてもお元気で、テキパキ、ハキハキしていらして圧倒されてしまいそうでした。後をついて行くとそこは内田さんの工房?釣り部屋でした。所狭しと並べられた歴代のがまかつの銘竿の数々、リールやらトロフィー、盾。そしてウキ制作用の機械やら道具類が並んでいました。すごい!

「緊張せんでええよ、ほらお茶でも飲みん!(笑) こうゆう雰囲気初めてかや?」 バリバリの三河弁で何故かすぐに癒されていきました。

「初めてですよ~、内田さんと言えば内田ウキじゃないですか、あれはここで作られてるんですねぇ!」

「おお、ほーだよ、こうして1本1本手作りしとるんだがね。俺のウキは形が個性的でしょう、だで機械使えるのは最初の削り出しだけなんだわ。あとは殆ど手でせんとね。だで手間が掛っとる分、愛情もこもっとるんだわ(笑)。」

「すごいです!よく見ると本当に全部が微妙に違いますね。シェイプも形状も全部違いますね。」

「でしょう、こっちは本流タイプ、これは際用、でこうゆうのはサラシ用。それは遠投用。それぞれにまた負荷が違うでね。あ、これ1本あげるわ、今日使ってみりん!」

「ほ、本当ですか!ひゃ~~、勿体なくて使えませんよこんなの。高切れしたら泣きそうじゃないですか!」

「失くしたらまた今度は買ってちょ(笑)」 

そんなこんなで話してると時間はアッと言う間に過ぎていってしまいました。何をとっても新鮮で興味深い話題ばかり。やっぱり歴戦の強者は奥が深いのです。

そしてやっと内田さんのお宅を出発して、一路三重県に向かったのであります。

「深瀬くん、いつもこんな感じで運転しとるん?」

「え?どうゆう事ですか?」

「その体勢ちゅうか姿勢とか、自分が一番リラックスしてる状態ですか?ってこと。」

「え、、、、いや、今までそんな事考えた事もないっす。でも普通に今運転してますけど。」

「釣りに仲間で行くんなら交代しながら運転も出来るけんど、1人の時は全部運転するでしょう、それが試合に行くとしたらどう?運転で疲れとったら頭も働かんし大体は夜中に行くんだで睡眠不足もある。だで、運転中は寝てはいかんけど一番に、体力も気力も温存できるように工夫しとかんとダメなんだがね。」

「な~~~~るほど!もうそこから始まってるんですね!」 こんな話もありました。

「初めて行く釣り場はね、全く状況が解らんでしょう、行ってみんと解らんがね。何にも解らんのに深瀬くんヒョッとして竿ケースの中で早々、ウキとかセットしたるんでないの?」

「うグッ、、、で、ですね。殆どの場合セットしちゃってありますね。」

「それがイカンのだわそれが。いつもの馴染みのポイントならまだしも、何でもかんでもセットしちゃうって事はね、決めて掛るって事なんだわ。ほうだよホントに、無意識のうちに攻め方を自ら制限しとるってこと。自分で自分の首を絞めるようなもんだて。」

う~~~ん、深い!確かにそうだ。師匠のおっしゃる通り!ど初発の段階で状況判断してそれに合う仕掛けを作るのが当たり前なのに、ろくに観察もせず、適当な仕掛けでスタートするようでは「攻め」の精神に叛く行為だ。急遽仕掛けを作りなおすっても二度手間だしね。とにかく車内でも興奮するお話ばかりで頷くことしきりでしたよ。(泣)

 

渡船屋の駐車場に到着して準備をしていると続々と車が入ってきます。いつもより人が多いみたいだなぁなんて思ってると、

「あ!内田孝一さんじゃない!?」 「おお!G杯優勝の内田さんやぁ!」などなど、段々と騒ぎになってきちゃいました。そりゃそうでしょ、中部地区で内田さんと言えばこの釣りする人ならかなりの有名人ですもんね。それでも師匠は気持ちよく皆さんにご挨拶してらっしゃいましたよ。上を行く方は謙虚でもあらせられるのですね~。

 

渡船屋のオヤジさんの計らいでこの日はフナカクシの「チョボ」という磯に上がりました。オイラはもう何度も乗ってる磯なんですが、一応はここいらで師匠に地形説明とかしなきゃと思ったんですが、それよりも早く内田さんは話し始めました。

「ほれ、あの届くか届かんか微妙な所にいい根がはいっとるなぁ。」

「え?どこです?」 「あそこだがね、50mくらい沖。」

「そんなもんあります?」

「何回も上がっとって知らんかったの?」

「え~?偏光グラスで見ても見えませんよ、どこにも!」

「違うだて、良~~~~~く見てみ。あそこだけ微妙に波がもちあがる感じがするやろ?」

「う~~~ん、そう言えば何となくですけど、海面がほんの少しだけ持ち上がるような感じですかね、そうゆう目で見ないと気付かない位に本当に微妙ですけど、、、、、」

「ほうだよ、根が在るからそうゆう事が起るんだよ、波や潮は目に直接見えん事まで沢山教えてくれるんだよ。あの根はきっと、あまり誰からも攻められとらん筈だから撒き餌も仕掛けもど遠投して攻めてみ。届かんでもいいからどんどん攻めてみ!マキエに出て来るよ~、絶対型のいい奴が喰って来るけん。」

キツネにでもつままれた気分でしたが、師匠が言うならきっとそうなんだと信じるしかありません。

「俺はここの磯際をやってみるわ。」

「あ、でも内田さん、そこ、水深が1ヒロくらいしか無いメッチャ浅いとこですよ?底まで丸見えですけどぉ、、、」

「あはははは!そんな事誰だって見りゃ解るがねぇ(笑)。だけどねぇ良く見てみ。見えてる底はあの通りだけど磯際に向かって少しづつ深くなっとるでしょ?だでこの下は少し掘れとるんだと思う。ここは潮の抜けも抜群にいい場所やけどパッと見が浅いけん竿抜けになっとる筈だわ。おるよ、そこそこの奴ね。」

追い打ちをかけるように師匠の、オイラにとっては未知数的な解説がありました。決定的に言えるのは、オイラと師匠では見るポイントが全然違うってことですよ。師匠はよく繰り返して言ってましたが、「毎日毎日イジメっ子に驚かされて、怖い目にばかり遭ってるお魚たち。どこに居たら安心なのか、少しでも緊張せずにご飯食べられるのか、そうやって魚の気持ちで考えんといかん。」 この言葉も早速、証明された訳なんですよ。

 

「おら!深瀬くん!来たよ~。」

振り返って師匠を見ると竿はユッタリと大きな弧を描いているではありませんか!

「何です?グレですか?」

「うん、この引きはグレだろぅ(笑)。ほれ、こっちに竿を倒して反対側に走らせるんだよ、こっちには根が多いからね。そいでもって竿を寝かせてやり取りする。そうすると下に逃げようとしにくくなる。竿を立てると執拗に下にもぐるから。魚に行ってほしくない方向に先にテンションかけて誘導するんや。」

「はい。」

で、浮いて来たのは良型のグレです!45cmは有りそうです。

「スゴイっすね!本当に内田さんの予見通りだ!なるほどね~~!こんな時期にもこんなサイズが出るものなんですね。」

オイラも自分の釣り座に戻って攻撃を再開です。エイヤっ! そいやっ!とエサと仕掛けのど遠投をひたすら繰り返します。

師匠はまだ同じ場所を攻めてるのかなぁ?って後ろを振り返ってた時、来たんですよ、オイラにもね!ガツーーーーーン!!!ギュイーーーン!!!!!

一気に竿を元から引っ手繰られるすさまじさです!元竿のリールシートから曲がってるんじゃね!って心臓も一気にレッドゾーン突入です。

やれ竿をあーせい、こーせい!糸を出せとか巻けとか(笑)。こっちに移動してやり取りしろだの、もっと前に出ろだの。はい、確かに師匠のリアルなご指示に従い取り込みも成功しましたです!、、、、、50cmオーバー!、、、、の、、、、、サンノジ。(笑)

「ほらな!こんな型のがおるんだて、ああゆう竿抜けポイントに。グレじゃなかったけど、グレもええのおるんだがね(笑)。解るでしょう。」

「ですよね、ホントにそう思いました。でも師匠とオイラじゃレベルも釣った魚の種類も違いすぎですよォ(笑)。」

「まだまだ居るで安心しやぁ。はよ攻めて獲らんと!(笑)」

師匠はその後立て続けにグレの40cmをゲット。ちなみにこれも同じ場所でした。

次はオイラの番!の筈。やっぱりココも未だ根拠もなく、もっぱら気合いだけでしたが。師匠内田孝一さんとの釣りはまだまだ続きます!

 

つづく